「BLACK TOUR 2022」6/25名古屋公演レポート

6月25日(土)にZepp Nagoyaで行われた『ブラックスター -Theater Starless-』のライブツアーイベント「BLACK TOUR 2022」名古屋公演のレポートを公開!

 


 

開演を待つ名古屋。ツアーを重ねるあいだに列島はいよいよ夏の様相を見せ、この日も日本は灼熱へと近づいていた。そんな名古屋の街にあるZepp Nagoya。フロアのライトが消えれば、そこにはシアタースターレスを擁する夜の街がステージの上に現れる。治安の悪さが滲む景色の中にはスポットライトに照らされたダンサーが。目まぐるしいパフォーマンスにあわせてひらりと舞う紫の布地は……チームC!? まさに開幕しようとしているステージへと想いが馳せられれば、シンガーたちのシルエットが浮かぶ。センターには柘榴のシンガー・しゃけみー。「名古屋におこしのみなさま~!どうもごきげんよう~!最後までなにとぞよろしくお願いしまーす!」と声をあげると、そのまま妖艶なイントロに誘われて「紅に白」がスタートする。

 

 

『白蛇伝』をモチーフに、人間の娘に一目惚れをした白蛇の化身・白丈夫の愛と戦いの物語を、色香たっぷりに歌い上げるしゃけみー。蛇の化身を思わせる動きで魅せる総勢12人のダンサーのパフォーマンスは圧巻。その中でしゃけみーも華麗なダンスを見せた。PASSION、理土、RYOMA、巽imustatのパフォーマンスと共に大人のスリリングさを感じさせた「Just live to dance」に続いたのはチームP。リンドウのシンガー・あじっこが登場し、ポップで軽快な「陽はここに」を軽やかなダンスと共に歌い上げる。HAYATEたちダンサーも笑顔とリズミカルな動きによって楽曲の世界を体現すると、青く照らされたステージにジャジーなイントロが響き、吉野のシンガー・齋藤知輝(Academic BANANA)の姿が。

 

 

PASSIONたちの妖艶なパフォーマンスに彩られ「黒い虚実」のレトロなストーリーを見せた直後、一瞬でフロアの空気を変えたのはチームB。「一年ぶりだなぁぁぁ!」と雄叫びをあげたMC・ヒースことTakuya IDEが放つ「極夜」だ。名古屋は昨年のツアー以来と熱があがるチームB。そこには去年の名古屋ではいなかったたぬき、TORA、SHIMa、TAKAHIROのチームBが憑依するダンサーたちの姿も。視線を奪うステージングで会場を席捲すると、次の瞬間に轟く爆音。チームWの「Out in Out」をシンガー・晶こと小林太郎がパワフルに歌い上げていく。TORA、Shumei、理土、SHIMaたちダンサーもWらしい雄々しくダイナミックな動きでフロアの熱を上昇させていく。ここで最初のMCに登場したのは小林、チームPのマイカの歌声を担うKradness、そして夜光のシンガー・松本明人(真空ホロウ)。「Out in Out」の最後の「まで」という歌詞がようやく聴けた、と喜ぶ松本。どうやら彼のツッコミに小林が応えたようだ。そんな楽しいトークの後にはKradnessが「荒野にて」を聴かせる。

 

 

プッチーニ 歌劇『マノン・レスコー』を原典にマノンとデ・グリューの無邪気な愛の結末を、紡がれたひとつ一つの言葉から確かめるように歌うKradnessが印象的だった。そんな一曲に続いたのはチームCの「暁の願い」。ミクチャで見ているオーディエンスには美しい装飾のような演出でも魅せ、PASSION、渡辺謙典、理土、巽imustatと共に5人一体のパフォーマンスでチームCのスターレスでの景色を彷彿とさせた。パフォーマンスのカラーの違いがチームごとの個性にもなっていると感じさせたのは、松本が歌うチームKの「波のままに」。RYOMA、HAYATE、Shumei、YU-TAの動きは堂々たる王者の迫力を感じさせ、感情を隠すことなく溢れさせる松本の歌声が印象的だった。

 

 

その松本と共に齋藤が歌う「caprice of love」。繊細な齋藤のボーカルと魂を響かせる松本の歌声がクロスする一曲は、おしゃれなサウンド感で響かせるドラマティックなナンバーだ。続いてチームP。Kradnessが歌う隣でRYOMAが全身の動きでメロディを感じさせれば、歌のバトンが渡るようにクロスするあじっこの隣ではHAYATEが優しい旋律のままに踊る。そんなエモーショナルな「はつ恋」に続いたのは、あじっこと小林が歌う2021年ホワイトデーイベント曲「催花の宿星」。2人は『水滸伝』を原典に運命の愛のために戦いへと身を投じる男の想い宿すエレクトロチューンを歌い上げた。さらにピアノの旋律に誘われるように荘厳なバラードが響く。オリジナル曲では藤田玲とあじっこが歌う「Fragile Lake」を、同じKのシンガーである松本が、あじっことともに響かせ、歌心溢れるユニゾンがオーディエンスの心を揺さぶった。

 

 

そのままライブは松本の歌う「沈まぬ月」へ。齋藤も登場し、たゆたうような静かな旋律の中で感情迸る歌を聴かせると、今度はIDEと小林のコラボレーションで聴かせる「Somewhere」。互いの歌声が彩るのは歌への情熱。一度も視線を交わさない二人によるナンバーが、静かな青い炎のようにフロアを浸食していった。昨年の温泉イベントで実装されたチームBの「綺羅星」は彼らの飾らない想いで紡がれた一曲。切々とラップを紡ぐIDEの後ろにはチームBを彷彿とさせるダンサーたちの姿が。彼らの絆の強さを感じさせるシーンだった。そしてここでチームPの「虹の彼方へ」。Kradnessの後ろにはあじっこ、そして松本。あったかもしれない未来について、伸びやかな歌声によって思い馳せる時間となった。

 ここでMC。IDE、あじっこ、齋藤の3人によるトークへ。話題はもちろん「虹の彼方へ」での松本について。「彼(松本)は元々チームPのメンバーですから」と笑顔を見せるあじっこ。しっとりゾーンからデュエットゾーンへと進んできたセットリストについての感想を語らう3人。そしてここでツアーでの伝家の宝刀「マイダンサーズ!カモン!」を行ったのは齋藤だ。理土とHAYATEが肩を組むように登場し、齋藤の歌う「The Final Problem」で熱くアグレッシヴな彼の歌を響かせると、畳み掛けるようにチームWが先日振付動画も公開された「GOLGODA」でフロアを圧倒した。アッパーチューンで畳み掛けるライブ。Wからバトンを受け取ったのはチームP。マイカのラップパートが新鮮に響き、彼の新たな感情を感じさせる「縷々たるは祈望」から、銃声と唸るベースの音とが荒々しく響くチームBらしい毒々しさ滲む「毒蛇」へと繋がるライブ。フロアの空気を一変させたIDEは、さらに全身から響くようなビートでオリエンタルな「不死鳥」、そしてステージの時間を駆け抜ける「韋駄天」へと全身全霊のダンスパフォーマンスと言葉の弾丸を飛ばし、チームBの迫真のステージングを届けた。

 

 

 そんなBの後を受けたのはしゃけみー。「御手を拝借、よろしくお願いします!」の声で会場をひとつにして、今回初めて振付がつき、ミステリアスな楽曲である「Sub rosa」を響かせた。

 最後のMCを務めたしゃけみー。今年のツアーの6本目。前回のツアーでの名古屋公演はシンガーだけの登場だったが、今年はダンサーと共に歌えたと喜びを届ける。このツアーのために、艶やかな紫が印象的な『BLACK LIVE Ⅱ』の衣装に身を包んだチームCが本領発揮のターンとなると告げたしゃけみー。「それではラストスパートです。チームCパートはこの曲から」という声でフロアが暗転。さぁ。チームCのターン!と思いきや、流れてきたのは重々しいビート。なんとチームWの「雪花」ではないか!青い光の中で切々と歌い上げる小林だが、その理由に観客は気づいたはず。そう。チームWがステージで初めて「雪花」を披露したとき、モクレンとカスミはチームWの所属だったのだ。

 

 

 そして場面が変わるように会場の空気が変貌する。チームCの衣装に身を包んだ渡辺謙典・理土・巽imustat・PASSIONが妖艶で美しいダンスを披露する中、「To be, or not to be」のメロディが静かにチームCの舞台の幕を開ける。シェイクスピアの描く悲劇『ハムレット』の美しくも悲しい物語が歌とダンスとで繰り広げられる様に会場の視線は釘付けに。続いたのは「Into me」。ルイス・キャロルの著作『不思議の国のアリス』の世界をベースとした一曲が響くステージで、原典の登場人物を再現したような新たな振付によるパフォーマンス、まるでミュージカルのようなステージングでオーディエンスを楽しませた。さらに情感たっぷりに歌い上げられる「花ほどく」、そしてビゼーが綴ったオペラ『真珠採り』をモチーフにした「灰燼に罪」の、残酷なほどに燃え上がった情念の愛をエモーショナルに歌うと、2周年イベント曲「Sanctus」では鼓動のダンスビートで紡ぐ祈りの歌を躍動するパフォーマンスと共に響かせた。

 

 

 

 チームCの幻想的なステージングのあとには、名古屋公演に出演した全シンガーが登場。チームCのパフォーマンスへの感想を告げたあとにはメンバーから最後の挨拶へ。

「あっという間ですよ。一番の望みは、僕は向こう側(客席)で(ライブを)見てみたい。そう思いながらライブを見させていただきました。残りあと一本もかき乱していきます」(松本)

「今日、コラボレーションの話があったけど、もちろん歌うパートナーだけじゃなく、作ってくれた方とか、曲が出来上がるまでのいろんな物語があって。ステージで踊るダンサー、(見てくれる)みなさんがいて成り立っていると思うんです。今日歌った「caprice of love」は6本目にしてやっとFeelできた気がします」(齋藤)

「「雪花」をきっかけに始まり、「Into me」も初出しだったんですが、僕もこのライブを客席で見たいと思いました。なんでもいいので、気持ちが届いていたら嬉しいなと思います」(しゃけみー)

「チームCが来ると思いきや、チームCのはじまりに「雪花」をやらせてもらって、なんだかちょっと悪役感が……(笑)。バチバチやっていたときの感じが刺激的で、その後からの曲の繋がりも大好きです」(小林)

「6月に40度を超えたのは初めてだそうです。でもみんなが盛り上げてくれたおかげでライブはもっともっと熱いものになったんじゃないかと思います。この調子で我々もファイナルに向けて盛り上げていこうと思います」(Kradness)

「名古屋、めちゃくちゃ最高でした。スターレスの楽曲って穴が開いたときには違う人間が入ってパフォーマンス出来ることだと思いますので、今日はいろんな妄想がかきたてられるステージをお見せ出来たんじゃないかと思います」(あじっこ)

「チームBはご存知のように物語は止まっているのですが、それでもツアーではチームBの楽曲、ヒースの楽曲、少しでもみなさんに届いてくれていたらいいなぁ、と思います」(IDE)

名古屋の夜は最後の盛り上がりへ。「ラスト、夏、はじめましょう!」としゃけみーの声でぶちあがるサマーチューン「Early Summer Affair」へ。Kradnessとしゃけみーのボーカルが絡み合う中、ダンサーも全員登場し、オーディエンスも軽快なビートに跳ねれば、フロアを大きく揺らす。ラストナンバーはまるでオーケストラピットから音が紡ぎ出されるような深淵の旋律に、モクレンが憑依したように渡辺謙典が踊りだし、PASSION・理土・巽imstatも続き、チームCのはじまりの曲「Purple Dawn」へ。これこそモクレンの『歓喜の歌』を柘榴が歌う名曲だろう。

2022年という一年に、少し早めに夏を連れて来てしまったかのような『BLACK TOUR 2022』は残すところあと1公演。名古屋公演は2カ月に及んだツアーの、その最終公演へ向けて、勢いをつける一夜だった。

 

 

 

TEXT BY えびさわなち

 

▼出演者
齋藤知輝(Academic BANANA) (吉野 Singer)
松本明人(真空ホロウ) (夜光 Singer)
小林太郎 (晶 Singer)
あじっこ (リンドウ Singer)
Kradness (マイカ Singer)
Takuya IDE (ヒース MC)
しゃけみー (柘榴 Singer)

 

▼DANCER
PASSION
理土
HAYATE
TORA
SHIMa
たぬき
渡辺謙典
RYOMA
Shumei
巽imustat
YU-TA
TAKAHIRO

 

▼STAFF
総合演出:福山 桜子
音楽監督:阿部 隆大
振付:楢木和也 (梅棒)、泰智 (KoRocK)、CluMsy CracKer-Jack、
制作:株式会社ONTASTE
主催:DONUTS