「BLACK TOUR 2022」5/14大阪公演レポート

5月14日(土)にZepp Osaka Baysideで行われた『ブラックスター -Theater Starless-』のライブツアーイベント「BLACK TOUR 2022」大阪公演2日目のレポートを公開!

 


 

ブラックスターにとって初の全国ツアーとなった昨年の「BLACK TOUR」では福岡、大阪を廻ったチームWの晶シンガー・小林太郎とチームBのヒースMC・Takuya IDEだったが、昨夜の大阪のショーはチームWのターンとばかりに小林の轟くラウドボイスが会場を席捲していた。今夜も大阪。もしや……という想いがフロアには満ちていたように思う。その期待に応えるように、暗転から全ダンサーによる圧巻のパフォーマンスの先、はじまりを告げたのは稲光のような音。「調子はどうだ!? 大阪!俺からの命令はたった一つ。全員楽しめ!」と叫ぶとチームBがステージを占拠!唸り猛り狂う雷の如き攻撃的な「雷神」を響かせる。全てのダンサーがチームBの衣装に身を包み登場、トラックの中で躍動するビートをオーディエンスに体感させると、ライブ開始早々に会場はクライマックスの熱に!和楽器の音が轟くイントロからオリエンタルな旋律で聴かせる「炎神」、チームB曲ではお馴染みのダンサーTORA、たぬき、SHIMa、TAKAHIROがアフレッシヴなパフォーマンスでIDEの鋭いリリックをさらに強烈な切れ味へと変貌させていく。ヘヴィなベースが轟く「無敵」まで、IDEとダンサーたちはチームBの荒々しい風でフロアを満たしていったのだった。

そんな殺伐としたステージの後には煌めきと妖艶さとが同居するチームPの「Paradise Lost」が鳴りだす。Kradnessとあじっこが登場し、色鮮やかなユニゾンで会場の空気を一変させると、続けて「縷々たるは祈望」へ。PASSION、HAYATE、RYOMA、巽imustatは、まるで乱世の歌の慟哭のような激しさの中にも雅さのあるダンスを見せた。
チームPのステージからバトンを渡されたのはチームW。小林太郎がShumei、理土らを率いて登場すると、会場を震撼させるほどのロングトーンを響かせ「Kiss or Bullet」でフロアを席捲させ、ジュゼッペ・ヴェルディが手掛けたオペラ『仮面舞踏会』をモチーフに2020年のバレンタインイベントで実装された「仮面は闇に溶けて」を聴かせた。まさかこの曲が聴けるとは!とばかりにフロアでは赤と水色のライトが大きく揺れていた。

続いたのはバレンタイン楽曲。2022年のバレンタインイベント曲「caprice of love」を歌ったのはチームKの吉野シンガー・齋藤知輝(Academic BANANA)と、夜光シンガー・松本明人(真空ホロウ)。ジャジーで大人な雰囲気たっぷりのこの曲を軽やかに、ソウルフルに歌い上げ、PASSIONやRYOMAが華麗なダンスで楽曲の世界を彩った。
最初のMCはチームKの歌唱を担当する2人。「昨日は最後、すごい勢いでチームW一色という感じで終わりましたけれども。今日は頭からチームBがものすごい勢いでしたね」と松本。これまでのどのライブとも違う、と言うと、「楽屋もすごいことになっていましたね」と齋藤も笑顔を見せる。季節ごとのイベント曲についての話の流れから、ライブは夏のイベント曲「Mid Summer Beach」へ。小林と齋藤のコラボで聴かせるギラギラとした真夏のダンスチューン。YU-TAをはじめとするダンサーたちがフロアを煽るパフォーマンスで、会場一体となったパーティーチューンを楽しませると、今度は色香漂う「黒い虚実」だ。齋藤が歌いあげる中、ダンサーは妖艶な動きで楽曲の世界観をさらに深めた。

齋藤の表現力の高さを感じさせたジャジーなナンバーがフロアを浸食していったあとも、夏のイベント曲は続く。チームBの登場だ。重々しいビートで紡ぐトラックがエモーショナルな「影炎」で、オーディエンスは高くジャンプする。会場の真夏の空気を鮮烈に熱くした楽曲群からステージはハロウィンのシーズンへ。妖しいピアノの音色に誘われるように登場したのはKradness。キョンシーさながらのジャンプで魅せるダンスが目を引く中、透明感溢れる歌声で響かせる「Trick or Truth」だ。

「今日はなんと言おうがハロウィンだー!」と声をあげるKradnessが萩原朔太郎の『猫町』をモチーフに描かれたハロウィンポップを聴かせると、チームKのハロウィンソング「Halloween Night」が続く。モチーフがメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』なだけに、ダンスにもどこかモチーフが感じられるようだった。そんな一曲を齋藤が伸びやかに歌ったところで、紅葉の美しさと色鮮やかな木々の色を感じさせる爽快ダンスチューン「残紅の行方」をKradnessとあじっこが歌うと、会場は秋の空気で滲んだような気がした。
「素晴らしい歌をありがとうございます」とチームPのふたりを迎えるように出て来たのは小林。Kradnessとあじっこを加えて、3人でのトークタイム。「太郎さんは昨日、かなりWの曲を歌っていましたが、首とか大丈夫ですか?」と心配顔のあじっこに、笑顔を見せ安心させる小林。初大阪となるKradnessは「昨日に続き、今日も某肉まんを食べて大阪の血が滾っております」と笑みを浮かべた。夏から秋へと季節が進んだステージは、ここで冬の様相に。あじっこが一人、ステージに立つと「Luminous Snow」を情感たっぷりに歌い上げる。ガットギターの音色が紡ぐのは、オスカー・ワイルドの『幸福な王子』。喜びと悲しみとが交差する物語の歌をハイトーンを交えて聴かせると、『クリスマス・キャロル』を原典に持つ「Salva me」へ。荘厳なドラムと切々と響くピアノ、神々しさのあるチェンバロの旋律とが印象的な一曲で、会場の空気を根こそぎあじっこの歌へと引き込んだ。

クリスマスの時間はヴィルヌーヴ版『美女と野獣』をモチーフとしたチームWの「孤独の夜、祈りの月、」へとバトンを渡す。2021年のクリスマスソングとして人気を博したこの曲。真摯な愛を歌う小林の声に、昨年のクリスマスイベント開催時のスターレスへと想いを馳せたファンも少なくないだろう。スターレスに訪れた一年を楽曲で振り返るように、クリスマスの後には年末を彩った夜光の「波のままに」。

松本の魂宿る歌声のあとには、ダンスパフォーマンスの時間へ。静かな空気は、会場を森の奥へと誘うように、夜の静寂や虫の声、木々の囁きを響かせる。大地を思わせる雄大で壮大な音楽に合わせて渡辺謙典が優雅に感情的に踊る姿は、大地からの鼓動をもダンスで伝えるようだった。素晴らしい時間に続いたのは、『竹取物語』にバレエ『白鳥の湖』と『ジゼル』の要素を散りばめた「Fragile Lake」。本来はケイシンガー・藤田玲とリンドウシンガー・あじっこで歌ったバラード曲だが、ツアー用の松本とあじっこという組み合わせで、ユニゾンでの高音と低音のシンクロがオーディエンスの心を揺さぶった。続けて「催花の宿星」をあじっこと小林が響かせる。『水滸伝』が原典にあるこの曲は、静かなビートに情熱的なギターの音が重なるナンバー。動と静の歌声が会場に広がっていくと、続けてKradnessとあじっこの歌う「はつ恋」へ。2人の歌唱に合わせるようにRYOMAとHAYATEが甘く軽やかなパフォーマンスを見せた。ホワイトデーの曲が2曲続いたところで、チームBの「Monokaki」が響きだす。『ラ・ボエーム』という原点がありながらも、ヒース自身の想いが記されたような静かな一曲を歌うIDEの声に熱が宿る。
ここでIDEのMCタイムへ。前日に発表となった3rdアルバムの投票企画の結果を受けて、ヒースとチームBに対していろいろと考えたというIDE。ここから彼らと共に限界突破で歌う!と意思表明をしてくれたところでライブは「Judas」へ。言葉に、動きに、全身に滾る想いを注入しながら歌い上げた。そのままライブは重々しいイントロに誘われるように『ヨハネの黙示録』を原典とした「Mosquitone」へと移行していく。翼をもがれた鳥のようなダンスが楽曲に宿る苦悩や足取りを感じさせると、ステージに鼓動の音が。今度はマグマのように渦巻く熱が息づく「不死鳥」だ。楽曲の繋がり方にストーリー性を感じさせてくれるところがさすがIDEといった、圧巻のライブだった。「さぁ。暴れ狂うのが俺たちの時間だったよなぁ!全国のチームBが大好きな嬢ちゃん方。ここで楽しまねぇと、ライブじゃねぇぞ!」と叫ぶIDE。チームBの心意気をそのままトラックに刻み込んだような「讃B歌」だ。チームメンバー1人ひとりが名乗りをあげるような一曲に、ナンバリングされるたびにチームB衣装を纏ったダンサーがチームBのパフォーマーとして、それぞれのメンバーを“魅せる”粋な演出に、オーディエンスはハートを撃ち抜かれたことだろう。

IDEもダイナミックなダンスを見せた最強の名乗りソングのあとには、チームBが登場したあの日の歌。「日蝕」だ。チームBのメッセージが詰まったセットリストは、その熱気でフロアを圧倒していった。
ここでシンガー全員が登場。ダンサーズの紹介では会場から大きな拍手が沸く。楽しいライブはあっという間に過ぎてしまう。ここで最後の挨拶を。
「ヒースの言葉や鼓動がズキズキと突き刺さりました。今日のBのステージを見ていて、吉野が求めるのなら、一番に。誰かの心に一番に突き刺さる歌を唄えるよう頑張ります。」(齋藤)
「僕もいつの日か、“夜光か、夜光以外か”と言えるように頑張ります」(松本)
「ツアーですから。俺が千秋楽みたいな空気を作っちゃったけど、まだ折り返してもいないから!この後にはまだ出ていないメンバーもいますし、さらに盛り上がると思うので、絶対にお見逃しなく!」(IDE)
「今日はIDEさんが熱量を底上げしてくれたので、その熱を損なうことなく残りのツアーも僕たち一丸となって駆け抜けていきたいなと思います」(Kradness)
「今日、いろいろな歌をうたわせていただいて、持っているものはここに置いていけたかなと思います。今日はチームBがめちゃくちゃカッコよかったんですけど、チームP、負けておりませんので!これからもよろしくお願いします!」(あじっこ)
「昨日は僕が多めに曲をやらせてもらって、今日はチームBがブチかましてくれたんですけど、ツアーはまだまだ折り返していないです。まだ走り始めたくらいで、ゴールまで本当に僕もわからないくらいです。そのくらい楽しいことが待っているということで、最後までよろしくお願いします!」(小林)
ライブのラストパートはやはり今日の主役・チームB!小林が曲振りで遠吠えを聴かせたところで、狂犬さながら、周りに噛みついていこうという姿勢を示すチームのスタンスを刻む「駄犬」が鳴り響く。IDEが作ったチームBの色を、TORA、たぬき、SHIMa、TAKAHIROが増幅させる。ほかのダンサー・シンガーも登場し、ワンワンダンスで曲を盛り上げる。終了かと思いきや、最後は「極夜」!力強いビートにメロディアスな歌が乗る。ダンサーとIDEの5人でのパフォーマンスからも、ゲームから感じるチームBの強固な絆を思わせる。そんな圧巻のパフォーマンスが、この夜のライブを締めくくった。簡単に小さくならない炎をオーディエンスの胸に灯した大阪2日目の夜。次のライブへと消えぬ熱気というバトンを渡したのだった。

 

TEXT BY えびさわなち

 

▼出演者
齋藤知輝(Academic BANANA) (吉野 Singer)
松本明人(真空ホロウ) (夜光 Singer)
小林太郎 (晶 Singer)
あじっこ (リンドウ Singer)
Kradness (マイカ Singer)
Takuya IDE (ヒース MC)

 

▼DANCER
PASSION
理土
HAYATE
TORA
SHIMa
たぬき
渡辺謙典
RYOMA
Shumei
巽imustat
YU-TA
TAKAHIRO

 

▼STAFF
総合演出:福山 桜子
音楽監督:阿部 隆大
振付:楢木和也 (梅棒)、泰智 (KoRocK)、CluMsy CracKer-Jack、
制作:株式会社ONTASTE
主催:DONUTS