「BLACK TOUR 2022」5/13大阪公演レポート

5月13日(金)にZepp Osaka Baysideで行われた『ブラックスター -Theater Starless-』のライブツアーイベント「BLACK TOUR 2022」大阪公演1日目のレポートを公開!

 


 

会場が真っ暗になると、フロアはスターレスのある街へと変貌を遂げる。シリアスさと緊張感とを宿す楽曲が流れる中、街の雑踏、喧噪、それを全て吹き飛ばすような勢いを持ったダンスパフォーマンスが繰り広げられる。圧倒的なパワー感。スクリーンに刻印のように浮かぶ各チームのアルファベット。前回の羽田公演とは違う振付に驚きつつ、文字が映し出されるたびにスポットの当たるダンサーが、それぞれのチームを象徴するような動きを見せる。そしてステージ上にはシンガーたちの姿が。銃声が響き、鳴りだす「BLACKSTAR」。晶シンガーの小林太郎の伸びやかながら攻撃性を内包した歌声は、会場の空気を完膚なきまでにブラスタの色に塗り替えていく。しかもこの曲で登場したダンサーは12人!躍動感あふれるダンスによって楽曲のパワーを増幅させ、大きな熱の塊となった楽曲に、フロアのライトも大きく揺れて応えていた。

「ブチあがっていこうぜ!大阪ぁぁぁぁぁ!」と雄叫びをあげる小林。Shumei、TORA、理土、SHIMaらが大きく跳ね、ライブはチームWの「Breakin’ it faster」へ。魂の歌声に会場が揺れる。続いて、渦を巻くようにグルーヴするイントロと相反して静かに佇む吉野シンガー・齋藤知輝(Academic BANANA)が歌う「Treasured」だ。ジュゼッペ・ヴェルディが紡いだオペラの傑作『イル・トロヴァーレ』をモチーフにした一曲。吉野バージョンを情念たっぷりに聴かせた齋藤に続いたのは「Treasured」のケイバージョンを歌う、リンドウシンガーのあじっこだ。去年のBLACK TOUR名古屋公演を彷彿とさせるような流れが印象的だった。

RYOMAらダンサーと一緒にキレのあるパフォーマンスを見せたあじっこだったが、歌のバトンは同じチームのマイカシンガー・Kradnessへ。ふたりで歌うチームPの「虹の彼方へ」でフロアを盛り上げる。

Kradnessとあじっこのユニゾンでも楽しませた爽やかなダンスポップチューンの後には、和楽器の音色が響き、チームBが登場。ヒースのMC・Takuya IDEはTORA、たぬき、TAKAHIRO、SHIMaを率いて“チームB此処に在り”と高らかに宣言するように「日蝕」を轟かせた。
「盛り上がっておりますね」とステージへやってきたのはチームK・夜光のシンガーである松本明人(真空ホロウ)。IDEと共に今回のツアーの感想や展望だけではなく、“今日ここでしか聞けない話”としてIDEが夜光の歌について語る、という場面も。松本の「マイダンサーズカモン!」の声にYU-TAらダンサーも登場し、貴重なトークを聞かせてくれた松本が歌う「波のままに」へ。

ダンサーの物語的なパフォーマンスと共に松本はドラマティックなビートに彩られた一曲を歌い上げる。続く「沈まぬ月」では齋藤も加わり、言葉を紡ぐように丁寧に歌声を重ねる。夜の街の妖しさが滲む「caprice of love」を齋藤、松本がソウルフルに聴かせれば、PASSIONたちダンサーも楽曲に色気を宿していたのが印象的だった。チームKの「The Final Problem」の冒頭を齋藤が唸るように歌えば、舞台上の空気がガラリと変わった。ここはシャーロック・ホームズシリーズの『最後の事件』をモチーフにした、スリリングでサスペンス的な世界。宿敵モリアーティを追い詰めるホームズが見たものとは。そんなエモーショナルなドラマを持って突き進む一曲をHAYATEと理土がダンスでも体現する。

続いたのは『レ・ミゼラブル』をモチーフとした「No Way Out」。数奇な運命に翻弄された男が譲ることのできない真実の愛と確かな想いを持ったこの曲を小林が、地に足をつけ、全身全霊で歌い上げた。続くのは、轟くビートに「オイ!オイ!」と慟哭の声をあげてフロアを煽るIDEが歌う「極夜」。ダンサーたちもダイナミックなアクロバットを交えたパフォーマンスでチームBの躍動感を放つ。狂乱の歌が終わり、フロアを静けさが占拠する。スポットの光が“歌”を照らすようにKradnessに光があたる。「黎明は待たない」だ。アレクサンドル・ボロディンによって書かれたオペラ『イーゴリ公』をモチーフとした公演を彩る一曲を、切々と歌うKradnessが歌の世界観を紡ぎ、巽imustatらダンサーが、その動きで色濃い感情を立体的に届ける。

ここでこのツアーのために書き下ろされた楽曲「花火~Instrumental~」だ。自然の中から湧き出すような生命の息吹を感じさせるサウンドに合わせて、渡辺謙典が指先までも“踊り”であるかのように、命と大地の踊りを見せる。特に無音な中で、鼓動に誘われるままに動き、躍る姿は印象的だった。静けさを破ったのは疾走するダンスビート。あじっこがたぬきやYU-TAらダンサーたちと息の合ったパフォーマンスと共に見せた「陽はここに」では、オーディエンスはフロアで大きく跳ねて、ステージと一緒にヒートアップした。
ここでMCとして登場したのはチームPのあじっこ、Kradness、そしてチームKの齋藤。昨年の「BLACK TOUR」ではチームWB、チームKPCとして各地に散らばってのライブとなったものの、今回は多くのチームのパフォーマンスを各会場で見ることが出来るツアー。前回の大阪公演ではライブができなかったという3人は、初上陸の感想を語り合っていた。羽田とはセットリストが違ったこともあり、楽曲の感想も届けたてくれた3人。「今回も歌える限り、歌って、踊っていきたいと思います」とあじっこ。ダンサーを呼び込むと、2022年の花見イベント曲である「ひなげし」でライブが再開。見事にシンクロするパラパラで和の華やぎあるエレクトロダンスポップを聴かせると、同じく花見イベント曲として今年4月に実装された「名残の花」を小林が歌う。スタンダールの『パルムの僧院』をベースに持った一曲は、躍るようなホーンとセクシーなピアノの音色が魅力を放つナンバーだ。そんな花見ソングに続いたのはギラギラ輝く灼熱の太陽を思わせる「Mid Summer Beach」。小林と齋藤がステージを右へ左へ、と移動しながらユニゾンを聴かせ、大阪は灼熱に!さらにステージにチームBが姿を現し、「影炎」で夏の盛り上がりを強烈に印象付けると、「無敵」ではヒリヒリとした緊張感と攻撃性とを孕むトラックでアグレッシヴなラップを聴かせた。

ここで続いたのは小林。なんとBLACK LIVE Ⅱの衣装を着用してステージに登場した。そのまま小林は、轟くボーカルがストーリーテラーとなり、爆発力の高い熱情の音楽を響かせる「Bad Blood」へ。ジュゼッペ・ヴェルディのオペラであり、ヴィクトル・ユーゴーの『エルナーニ』に基づいて描かれた戯曲からスターレスが生み出すのは、混沌の情念の物語。ダンサーの激しいパフォーマンスと共に、オーディエンスも高く腕を挙げて堪能した。
ちょっと懐かしい衣装になっています、と照れ笑いを浮かべる小林が一人でMCを務める。ここでのトークでは、シンガーの仲の良さを感じさせるエピソードも披露された。さらに2019年にリリースされたゲームが、ついに3周年を迎えるとのことで、フロアからは歓喜の拍手が湧いた。初期レコーディングでの思い出なども語られる中、ライブはいよいよ終盤へ。まだまだチームWの時間だ、と言わんばかりにグルーヴする重厚なギターとスクラッチのイントロに始まる「Out in Out」が響き出すと、ダンサーたちもBLACK LIVE Ⅱの衣装で登場し、全身を大きく使った動きで楽曲のパワーを増幅させていく。荒々しい楽曲のターンから、チームWの幅の広さを味わうことの出来る「雪花」へ。『忠臣蔵』がモチーフとなっている美しくもヘヴィなバラードは、義に殉じる武士たちの想いが切々と歌い上げられる珠玉曲。そして力強く疾走するヘヴィなロックンロールがタフに響く「Burning breath」では会場を焼き尽くさん熱をステージから放ち、晶の魂の叫びをもオーディエンスに刻み付けたのだった。

 

「ブラックスターシアタースターレス、最高です!みなさんどうでしたか?」とあじっこが会場へ声を投げかけると、この日の登場シンガーたちがフロアへと視線を投げる。その視線の先にはペンライトを大きく振って応えるオーディエンスが。ここでIDEの呼びかけでダンサーズも登場。全員を紹介し、盛大な拍手が会場を包んだ。
「羽田からの大阪1日目ということで不安もありましたが、ばっちりたこ焼きを補給して、大阪を堪能できて、大阪の一部、関西の一部、マイカの一部として良きステージをお届けできたんじゃないかと思います!」(Kradness)
「衣装は真冬の衣装ですが、テンションを上げて楽しむことが出来ました!エモエモでした。一人で歌って、ダンサーさんもいて、本当に今日は特別な日になったと思います。ツアー、ゴールまで駆け抜けたいです」(小林)
「こうやって舞台に立たせていただいている側でも、袖でずっと(ステージを)見ていたんですけれども、途中すごく泣きそうになっちゃって。ぐっとこらえる場面とかあって。それくらい、みなさんも想像できないくらいの感動が待っていると思うので、ぜひ最後まで全公演を楽しみにしていてください」(松本)
「今日と言う日に、大阪で歌うことが出来て、本当に嬉しさがいっぱいでした。セトリを聴いてみなさん、“やっぱりブラスタはヤバいな”と思ったと思うんです。この後もまだまだ続きます。最後まで楽しんでください!」(齋藤)
「ツアーはまだまだ続きます。最後まで精一杯パフォーマンスしますので、一緒についてきて欲しいなと思います」(あじっこ)
「去年、WBで(大阪に)来ましたけれども、こんなにやるとは!滾るなぁ、と思って。やっぱりブラックスターというコンテンツですから、勝負していかなきゃいけないなってことで。この後もガッツリ、ツアーを走っていこうと思っているので、またお楽しみに!」(IDE)
アンコールはなく、本編だけでも最高潮の盛り上がりを楽しもう!というブラスタのシンガーたちの想いの結晶。ラストスパートの幕開けは「ALL IN」!2022年のホワイトデーイベント曲として実装されたアレクサンドル・プーシキンの『スペードの女王』をテーマとしたチームWの一曲は熱が滾り、表情豊かに展開していく雄々しいナンバー。“正気の沙汰じゃ、愛は燃えねえだろう?”と慟哭のように響く小林の歌に、リズミカルかつエモーショナルなダンスパフォーマンスが重なる。ラストは「Kiss or Bullet」。「かますぜ!楽しむぜ!」と声をあげる小林に応えてチームWのチームカラーである赤の衣装に着替えたダンサー12名全員が登場し、ステージを埋める。ビートの勢いのままに、小林を含む13名が横一列になってヘドバンをし、ステージ上で火花を散らすダイナミックなパフォーマンスが楽曲の音をさらに層の厚いものにしていき、クライマックスの小林のシャウトで大阪公演初日は幕を閉じた。熱い熱い夜は、チームWによって締め括られ、翌日の公演へ向けて、オーディエンスの心に火を灯したのだった。

 

TEXT BY えびさわなち

 

▼出演者
齋藤知輝(Academic BANANA) (吉野 Singer)
松本明人(真空ホロウ) (夜光 Singer)
小林太郎 (晶 Singer)
あじっこ (リンドウ Singer)
Kradness (マイカ Singer)
Takuya IDE (ヒース MC)

 

▼DANCER
PASSION
理土
HAYATE
TORA
SHIMa
たぬき
渡辺謙典
RYOMA
Shumei
巽imustat
YU-TA
TAKAHIRO

 

▼STAFF
総合演出:福山 桜子
音楽監督:阿部 隆大
振付:楢木和也 (梅棒)、泰智 (KoRocK)、CluMsy CracKer-Jack、
制作:株式会社ONTASTE
主催:DONUTS